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通気・換気のすべて 【Vol.1 通気・換気の必要性】

2022/02/15

通気・換気のすべて 【Vol.1 通気・換気の必要性】

2016年日本住宅新聞に連載(6回)されたインタビュー記事です。木造住宅では重要とされつつも、問題も多い躯体の通気・換気。省エネや耐久性を含めた外皮の設計法を研究している足利大学(当時足利工業大学)の 齋藤先生にお話しいただいています。
基礎的なことから 実例を用いた例まで簡単にわかりやすく解説していただいております。
今回は「Vol.1 通気・換気の必要性」をお届けします。

齋藤宏昭先生 プロフィール

足利大学工学部創生工学科建築・土木分野 教授(工学博士)。専門は建築環境工学。
(財)建材試験センター物理試験課、建築研究所環境研究グループ専門研究員などを経て現職

 



そもそも、外皮(注 1)の通気・換気はなぜ必要なのですか ?

 外皮の通気・換気の本来の目的は、躯体(注 2)内に浸入した水分を外に出し、劣化を防ぐことです。躯体内には、室内からは水蒸気、外からは雨水などが入り込むので、木材の含水率が高まります。すると腐朽菌が繁殖(注 3)して木材が腐り、強度が低下する恐れがあります。また、部位によりますが、カビが生えれば、室内の空気質への悪影響もあるでしょう。
 近年、住宅の断熱性、気密性が向上し、快適な環境を少ないエネルギーで実現できるようになりました。一方で、以前に比べ躯体内への事故的な水分の浸入に対する「乾燥性能」は低下しています。仕様によっては、躯体内に入った水分が乾きにくくなっており、重大な瑕疵につながりやすくなっているのです。ステープルやビスから二次防水(ルーフィングや透湿防水シートなど)の内側に侵入する、わずかな水分でさえも許容できない場合があるのです。
 また、外から入ってくる雨水への対策も、状況は大きく変わっています。昔は庇や軒の出、霧除けなど、意匠的な形で弱点をカバーし、雨水が入らないようにしていました。しかし、デザインやコストなどの観点から、庇や軒の出は抑えられるようになりました。
 そのため、外皮への雨がかりが増え、雨水が浸入するリスクが高まっています。特に日本の気候は、壁への雨がかりを増大させる強風雨の発生頻度が高いため、外皮の乾燥性能が欧米以上に要求されるといえるでしょう。


<高い含水率が腐朽を招く>

 

具体的には、どんな対策をすればいいのですか ?


 現実的な話をすれば、室内の水蒸気にしても、雨水にしても、その浸入を 100% 防ぐことは困難です。ですから、あらかじめ水分が多少浸入しても大きな問題が起きないような対策を取っておくべきでしょう。
 特に重要なのは、躯体の通気・換気をとることです。高気密・高断熱住宅でも、断熱層の外側に通気層が正しく施工されていれば、躯体内への水分浸入が大きな問題につながることはないでしょう。
 大切なのは、外からの雨水の浸入、室内からの水蒸気の浸入、そして入った水分の排出、この 3 点への対策のバランスが長期的に確保されているかどうかです。
 次回は、以前に比べて重要性が増している小屋裏換気と、棟換気の有効性についてお話しします。

<躯体の通気・換気は水分の浸入対策>

注 1:外壁や屋根・天井、床、窓などを指す
注 2:建築物の構造体のこと。基礎、柱・梁、小屋組など
注 3:木材の含水率が 25%を超えると腐朽菌が活発化するといわれる

 

通気・換気のすべて(全6回)のPDFデータもご用意!

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