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通気・換気のすべて 【Vol.5 下屋の換気の必要性】

2022/04/21

通気・換気のすべて 【Vol.5 下屋の換気の必要性】

2016年日本住宅新聞に連載(6回)されたインタビュー記事です。木造住宅では重要とされつつも、問題も多い躯体の通気・換気。
省エネや耐久性を含めた外皮の設計法を研究している足利大学(当時足利工業大学)の 齋藤先生にお話しいただいています。
基礎的なことから 実例を用いた例まで簡単にわかりやすく解説していただいております。
今回は「Vol.5 下屋の換気の必要性」をお届けします。

齋藤宏昭先生 プロフィール

足利大学工学部創生工学科建築・土木分野 教授(工学博士)。専門は建築環境工学。 (財)建材試験センター物理試験課、建築研究所環境研究グループ専門研究員などを経て現職

 



今回は下屋の換気についてお伺いします。下屋部分は漏水や結露が発生しやすいと聞いていますが、換気の観点からはどのような対策が必要ですか?

 下屋の換気がきちんととられていない住宅も少なくないようですが、下屋も屋根と同じように必ず換気が必要です。
 また、下屋の場合、給気・排気を軒裏換気口で兼ねていることが多いでしょう。しかし、開口が一方位だけでは、通気経路を確保できず換気量が不足します。さらに、換気口に風圧がかかりにくいような状況―特に住宅密集地で、空気が淀むような立地の場合―では、小屋裏内部の空気も排出されにくくなります。
 さらに、下屋には 1 階の天井が面していることも注意してください。1 階天井周り、特に外壁との取合いの防湿・気密施工が不十分な場合、居室から下屋に水蒸気が浸入する可能性があります。天井面の防湿と屋根面の防水が完全であれば、大丈夫かもしれませんが、下屋でも給気口と排気口を別々に設けるほうが、リスクを減らせます。特に排気口は雨押え換気などで下屋頂部に設ける方が良いでしょう。


下屋頂部に設ける雨押え換気
(TOKO 雨押え i-ROOF)

換気部材の防水性能も重要ではないでしょうか。

 もちろん重要です。換気部材の防水性を判断するに当たっては、地域の気候を勘案するべきだと考えています。例えば、九州などでは台風 が多いので、特に海沿いの地域では換気口の防水性能が低いと、雨水が浸入するリスクが高まります。一方、換気口や屋根面の防水が担保されれば、温暖なため結露のリスクは低いので、小さい換気口面積の方が理に叶っているともいえます。
 換気口面積を抑え、雨水が躯体内に浸入しないようにすると、換気性能は悪くなるので、この 2 点の兼ね合いは難しいところです。ゆえに、強風時は多少の雨水が浸入することを想定し、例えば桁まできちんと防水紙を施工するといった対策や、防水性能が高い部材を選ぶことは必須でしょう。
 次回は、最後のまとめとして、昨今の住宅業界のトピックと、換気の関係を考えてみたいと思います。

軒部の換気口から入った水で濡れた垂木

防水性能がある軒先給気部材を使う
(TOKO エアーフレッシュ) 

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