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通気・換気のすべて 【Vol.6 現代の住環境と換気】

2022/07/13

通気・換気のすべて 【Vol.6 現代の住環境と換気】

2016年日本住宅新聞に連載(6回)されたインタビュー記事です。木造住宅では重要とされつつも、問題も多い躯体の通気・換気。省エネや耐久性を含めた外皮の設計法を研究している足利大学(当時足利工業大学)の 齋藤先生にお話しいただいています。
基礎的なことから 実例を用いた例まで簡単にわかりやすく解説していただいております。
今回は「Vol.6 現代の住環境と換気」をお届けします。

齋藤宏昭先生 プロフィール

足利大学工学部創生工学科建築・土木分野 教授(工学博士)。専門は建築環境工学。
(財)建材試験センター物理試験課、建築研究所環境研究グループ専門研究員などを経て現職

 



近年、リフォーム、特に断熱改修への関心や注目が高まっています。既存住宅の断熱改修を行うにあたって、躯体の通気・換気はどうすればよいでしょうか。

 断熱改修で、外壁の充填断熱や気流止め行うと、躯体に浸入した水分が乾燥しにくくなる可能性があります。しかし、外壁通気層があれば 乾燥性能を担保できるので、改修時に外壁に手を加えるならば、断熱改修を行った部分だけでも、通気層を設けた方がよいでしょう。住宅全体を改修する場合は、小屋裏や床下の通気・換気にも配慮して計画を立てるべきです。
 ただ、実際に断熱改修の対象になるのは、築 30 年前後の住宅が多いのではないでしょうか。昭和 55 年省エネルギー基準(旧省エネ基準)に適合する住宅なら、壁には 50 ㎜前後の断熱材が入っているはず。その場合、壁はそのままにして、床や天井に断熱材を入れ、開口部の性能を高める方法がベターでしょう。
 屋根に関しては、リフォーム時に小屋裏を居室にして屋根断熱とすることも多いようですが、VOL.2 で話したように、屋根断熱の際には野地板と断熱層の間に通気の確保が必要です。施工上の注意点としては、通常、屋根通気層は垂木で仕切られているため、それぞれの通気層に給排気口をとらなくてはいけません。全ての通気層にまたがって給排気口を 取ることがベストですが、コスト上できない場合でも、垂木頂部を切り欠くなどして、全ての通気層に対し通気経路を確保してください。


<棟換気が1箇所しかない時の通気の1例>

住宅性能が向上しても、住まい手がそれに対応した暮らし方をしなければ、性能が完全に発揮されないこともあります。住まい手の生活習慣や意識についてはどうお考えでしょうか。


 VOL.3 で瑕疵の事例を取り上げた際、原因のひとつとして加湿器の可能性を指摘しましたね。2 階にリビングがあるような場合、加湿器は小屋裏空間の湿度に大きく影響を及ぼします。
 内部結露も省エネも、突き詰めると住まい方に関わる問題になります。一般に、住宅購入者はデザインや間取りに関心が行きがちですが、所有者として長期にわたり建物の性能を維持することにも意識を向けてほしいと思います。昨今は、デザインを優先することによって、躯体を健全な状態を維持するための防水や乾燥性能といった重要な要素が、ないがしろにされることがあります。住宅を購入する際は、表面上の機能だけではなく、隠れた性能を見抜く目を持ってください。
 また、工務店をはじめとする供給者の方々にも、棟換気や通気層の意味をきちんと理解していただきたい。判断基準はあっても、通気層や小 屋裏換気がなぜ必要かを、設計者が正しく理解できる情報が乏しいのが現状です。住宅供給者や研究者が、トラブルの原因を整理し、その対策を住まい手に提示できるようなツールを作っていかなくてはなりません。

通気・換気のすべて(全6回)のPDFデータもご用意!

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