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通気・換気の必要性 小屋裏換気 換気不良によるトラブル事例1
換気不良によるトラブル事例2 下屋の換気の必要性 現代の住環境と換気

齋藤宏昭先生

齋藤宏昭先生 プロフィール


足利工業大学工学部創生工学科建築・社会基盤学系准教授(工学博士)。
専門は建築環境工学。(財)建材試験センター物理試験課、建築研究所環境研究グループ 専門研究員などを経て2012 年より現職。

日本住宅新聞1月15日発行

齋藤宏昭先生に聞く通気・換気のすべて

木造住宅では重要とされつつも、問題も多い躯体の通気・換気。
省エネや耐久性を含めた外皮の設計法を研究している齋藤宏昭・足利工業大学准教授に、6回に渡って躯体の換気・通気についてお聞きします。
(毎月15日号に掲載)

通気・換気の必要性

-そもそも、外皮(注1)の通気・換気はなぜ必要なのですか?

高い含水率が腐朽を招く

外皮の通気・換気の本来の目的は、躯体(注2)内に浸入した水分を外に出し、劣化を防ぐことです。躯体内には、室内からは水蒸気、外からは雨水などが入り込むので、木材の含水率が高まります。すると腐朽菌が繁殖(注3)して木材が腐り、強度が低下する恐れがあります。 また、部位によりますが、カビが生えれば、室内の空気質への悪影響もあるでしょう。

近年、住宅の断熱性、気密性が向上し、快適な環境を少ないエネルギーで実現できるようになりました。 一方で、以前に比べ躯体内への事故的な水分の浸入に対する「乾燥性能」は低下しています。 仕様によっては、躯体内に入った水分が乾きにくくなっており、重大な瑕疵につながりやすくなっているのです。 ステープルやビスから二次防水(ルーフィングや透湿防水シートなど)の内側に侵入する、わずかな水分でさえも許容できない場合があるのです。

また、外から入ってくる雨水への対策も、状況は大きく変わっ ています。昔は庇や軒の出、霧除けなど、意匠的な形で弱点をカ バーし、雨水が入らないようにしていました。しかし、デザインやコストなどの観点から、庇や軒の出は抑えられる ようになりました。

そのため、外皮への雨がかりが増え、雨水が浸入するリスクが高まっています。特に日本の気候は、壁への雨がか りを増大させる強風雨の発生頻度が高いため、外皮の乾燥性能が欧米以上に要求されるといえるでしょう。

-具体的には、どんな対策をすればいいのですか?

躯体の通気・換気は水分の侵入対策

現実的な話をすれば、室内の水蒸気にしても、雨水にしても、その浸入を100% 防ぐことは困難です。
ですから、あらかじめ水分が多少浸入しても大きな問題が起きないような対策を取っておくべきでしょう。

特に重要なのは、躯体の通気・換気をとることです。高気密・高断熱住宅でも、断熱層の外側に通気層が正しく施工されていれば、躯体内への水分浸入が大きな問題につながることはないでしょう。

大切なのは、外からの雨水の浸入、室内からの水蒸気の浸入、そして入った水分の排出、この3点への対策のバランスが長期的に確保されているかどうかです。


2 月15 日号は、以前に比べて重要性が増している小屋裏換気と、棟換気の有効性についてお話しします。


注1:外壁や屋根・天井、床、窓などを指す

注2:建築物の構造体のこと。基礎、柱・梁、小屋組など

注3:木材の含水率が25%を超えると腐朽菌が活発化するといわれる

(取材協力・写真提供: 潟gーコー)


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日本住宅新聞2月16日発行

齋藤宏昭先生に聞く通気・換気のすべて

木造住宅では重要とされつつも、問題も多い躯体の通気・換気。
省エネや耐久性を含めた外皮の設計法を研究している齋藤宏昭・足利工業大学准教授に、6回に渡って躯体の換気・通気についてお聞きします。
(毎月15日号に掲載)

小屋裏換気

-小屋裏(注1)換気はなぜ必要なのですか?

冬場、室内を暖房しているときなどは、暖められて軽くなった空気が上昇し、天井の隙間から小屋裏に入り込みます。 人間は普通に生活するだけで呼気や調理・入浴に伴う水分を放出しているので、局所換気等で排出されなければ、当然その水分も小屋裏に浸入することになります。

前回もお話しした通り、この20 年ほどで住宅の断熱・気密化が進んだため、以前に比べて室内の温度が上昇しました。 このような近年の住宅は、24時間換気によって本来ならば冬期の室内湿度は低く抑えられるのですが、加湿器・開放型暖房器具の使用や、24時間換気を居住者が故意に止めた場合は室内の湿度が上昇します。このとき、断熱材を乱雑に置くだけなど、天井周辺の断熱・防湿施工が正しく行われていなかったりすると、室内の水分が小屋裏空間へ浸入し結露を誘発しやすくなるのです。省エネのために断熱化を行っても、不完全な防湿施工は、劣化のリスクを高めてしまうのです。

外部からの水分浸入にも注意する必要があるでしょう。野地板の釘穴や防水紙の重ね合わせから雨水が浸入する可能性はゼロではなく、近年普及している太陽電池パネルも、設置方法によっては雨水浸入の要因になります。近年は、各メーカーの努力で施工法が改善されていますが、これらのリスクを低減させるために小屋裏換気の確保が重要なのです。


-通気・換気には空気の入口(給気孔)と出口(排気孔)が必要です。
近年、棟(注2)に出口を設ける「棟換気」も増えていると聞いています。

棟換気トーコーアイルーフ

小屋裏は温度が上がりやすいため、熱せられた空気が上部に溜まります。そのため、屋根で最も高い位置にある棟から排気することは、理にかなっ たやり方です。シミュレーション計算でも、棟換気方式は、換気孔の面積が少なくても必要な量の換気を確保できるという結果が出ています。

また、都市部など住宅が密集している地域では、軒や妻側の風圧が低くなります。このような地域では、軒や妻換気口へ空気を入れ替える圧力が かかり難くなりますが、棟ならある程度の圧力がかかり、小屋裏内の空気が外へと出やすくなります。

-屋根断熱(注3)の場合、小屋裏換気はどうすべきですか?

屋根断熱時の通気

屋根断熱では断熱層より内側は室内として扱われるので、小屋裏換気は不要です。
が、外壁のように通気層を必ず設けて、換気を確保する必要があります。

屋根では、瓦の隙間から浸入した雨水が二次防水層の上に水が溜まり、 野地板の裏面に達することがあるので、通気層がない屋根断熱では垂木など通気層がないと野地板が湿潤し小屋組まで劣化するリスクが非常に高くなります。

ゆえに、一般に採用されている垂木間充填等の断熱方法では、屋根通気層の位置を野地板の下面とすることが重要です。


次号からは、瑕疵事例の分析を通じて、通気・換気のポイントを具体的に見ていきましょう。


注1:天井と屋根の間にある空間。屋根裏

注2:屋根の頂部で、屋根面が交差する部分

注3:屋根面に断熱材を施工する工法。天井面に断熱材を入れる場合は「天井断熱」という

(取材協力・写真提供: 潟gーコー)


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日本住宅新聞3月15日発行

齋藤宏昭先生に聞く通気・換気のすべて

木造住宅では重要とされつつも、問題も多い躯体の通気・換気。
省エネや耐久性を含めた外皮の設計法を研究している齋藤宏昭・足利工業大学准教授に、6回に渡って躯体 の換気・通気についてお聞きします。(毎月15 日号に掲載)

換気不良によるトラブルの事例1

今回から2回に渡って、通気・換気の不良による事故(瑕疵)の事例を、齋藤先生が分析、解説します。


〈トラブルの概要〉
構造 木造2 階建て(屋根形状は片流れ)
築年数 7 カ月
症状 当該住宅は平面が3 つに分割されたプランで、棟換気は長いもの、短いものが2カ所に設置されていた。
小屋裏から大量の水が居室内に浸入=写真@。
屋根を解体したところ、野地板も不具合のあった箇所だけ明らか湿っていた=写真A。
トラブルの概要イメージ図
イメージ図

-この新築住宅で発生した事故の要因は何でしょうか?

まず、大量の水分が小屋裏に浸入したと考えられます。雨水に起因する水分が浸入したのか、室内の湿度が高かったのか、正確に判断はできませんが、室内側に原因があるとすれば、加湿器を過剰に使用したとか、浴室の換気に配管ミスがあって、ダクトから浴室内の湿気が浸入した――などが考えられます=図。

その上で、大量の水分を排出するための換気能力が不足していたために、結露が発生したと推測されます。この建物では小屋裏空間が3つに区切られているにも関わらず、結露が発生した区画に換気棟が配置されていないことがわかります=図。

屋根全体で見れば、小屋裏換気量は公的な指針を満たしていると思われますが、問題が起きた部分に限れば、換気量が不足しています。結露の根本原因は何らかの水分の流入ですが、安全弁としての換気口面積が不足したことにより大量の結露水が生じ、最終的に天井面から室内に流れ込み、発覚したということでしょう

-どのような解決策が考えられますか?

まずは、水蒸気の発生源を断つことです。次に小屋裏換気の確保ですが、今回のようなケースでは全体の換気量が十分かどうかよりも、小屋裏空間の構成を把握したうえで、換気口をバランスよく配置することが重要です。当該住宅では、長い棟換気と短い棟換気が設置されていますが、「短い棟換気を、分割された3 カ所の区画にそれぞれ設置する」ことで解決できるでしょう。


次回は、リフォーム時に発覚した瑕疵の事例を見てみることにしましょう。

(取材協力・写真提供: 潟gーコー)


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日本住宅新聞4月15日発行

齋藤宏昭先生に聞く通気・換気のすべて

木造住宅では重要とされつつも、問題も多い躯体の通気・換気。
省エネや耐久性を含めた外皮の設計法を研究している齋藤宏昭・足利工業大学准教授に、6回に渡って躯体 の換気・通気についてお聞きします。(毎月15 日号に掲載)

換気不良によるトラブルの事例2

〈トラブルの概要〉
構造 木造3 階建て(屋根形状は寄棟・軒ゼロ
築年数 17年
症状 耐震性にも大きな影響があると考えられるほど、構造材の腐朽・蟻害が進行。外壁も、サイディングの反りなどが見られた。
キッチンや内装の更新を目的としたリォームの際に発覚し、最終的に、構造部の補修を中心とする内容に変更した。写真@
トラブルの概要イメージ図
イメージ図

-まず、外壁のサイディングの目地のシーリングが劣化していましたが?

サイディングの目地から雨水が大量に浸入した可能性があります。通気層があっても、浸入した水分を排出しきれず、通気層内に溜まったせいで、通気層内部の湿度が上がってしまったのでしょう。3階建てで、しかも隣家がないため外壁にかかる雨量も密集地に比べ多く、相当な量の水が入り込んだと推測されます。

-外壁を剥がすと、木材が激しく劣化しており、シロアリの痕跡もありましたが?

木材には腐朽菌が発生していますね。ちなみに、腐った後に木が白くなるのが白色腐朽菌、褐色になるのが褐色腐朽菌です。シロアリによる食害もひどい。芯材の周りが食べられていますね。

サイディングの目地から浸入した水が、胴縁を伝って広範囲に流れていき、開口部周りや透湿防水シートのたるんだ部分などに溜まったのでしょう。シートの裏側にも雨水の浸入痕があり、シートの排湿能力を超える水分が入ってしまったために、湿度も飽和状態になったものと思われます。

通気層があるにも関わらず、ここまでの状態になるのは深刻です。通気層が確実に機能していれば、ある程度の雨水が浸入しても、その水分は壁の外へ排出されるはずです。しかし、写真では通気層の上部が行き止まりになっているようです。通気層があるから大丈夫――という話ではなく、通気のための出入口を確保し、澱みが生じないよう通気経路や圧力バランスを、きちんと考える必要があります。今回は偶然に発覚しましたが、内装をリフォームする時でも、外装関連の検査を実施していただいた方が良いですね。


次回は、見逃されがちな“下屋” の換気についてお話ししましょう。

(取材協力・写真提供: 潟gーコー)


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日本住宅新聞5月16日発行

齋藤宏昭先生に聞く通気・換気のすべて

木造住宅では重要とされつつも、問題も多い躯体の通気・換気。
省エネや耐久性を含めた外皮の設計法を研究している齋藤宏昭・足利工業大学准教授に、6回に渡って躯体の換気・通気についてお聞きします。
(毎月15日号に掲載)

下屋の換気の必要性

下屋頂部に設ける雨押え換気(トーコー雨押えアイルーフ)

-今回は下屋の換気についてお伺いします。下屋部分は漏水や結露が発生しやすいと聞いていますが、換気の観点からはどのような対策が必要ですか?

下屋の換気がきちんととられていない住宅も少なくないようですが、下屋も屋根と同じように必ず換気が必要です。

また、下屋の場合、給気・排気を軒裏換気口で兼ねていることが多いでしょう。しかし、開口が一方位だけでは、通気経路を確保できず換気量が不足します。 さらに、換気口に風圧がかかりにくいような状況―特に住宅密集地で、空気が淀むような立地の場合―では、小屋裏内部の空気も排出されにくくなります。

さらに下屋には1階の天井が面していることも注意してください。1階天井周り、特に外壁との取合いの防湿・気密施工が不十分な場合、居室から下屋に水蒸気が浸入する可能性があります。

天井面の防湿と屋根面の防水が完全であれば、大丈夫かもしれませんが、下屋でも給気口と排気口を別々に設けるほうが、リスクを減らせます。
特に排気口は雨押え換気などで下屋頂部に設ける方が良いでしょう。

-換気部材の防水性能も重要ではないでしょうか。

もちろん重要です。換気部材の防水性を判断するに当たっては、地域の気候を勘案するべきだと考えています。

例えば、九州などでは台風が多いので、特に海沿いの地域では換気口の防水性能が低いと、雨水が浸入するリスクが高まります。
一方、換気口や屋根面の防水が担保されれば、温暖なため結露のリスクは低いので、小さい換気口面積の方が理に叶っているともいえます。

換気口面積を抑え、雨水が躯体内に浸入しないようにすると、換気性能は悪くなるので、この2点の兼ね合いは難しいところです。ゆえに、強風時は多少の雨水が浸入することを想定し、例えば桁まできちんと防水紙を施工するといった対策や、防水性能が高い部材を選ぶことは必須でしょう。


次回は、最後のまとめとして、昨今の住宅業界のトピックと、換気の関係を考えてみたいと思います。

トーコーエアーフレッシュ

(取材協力・写真提供: 潟gーコー)



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日本住宅新聞5月16日発行

齋藤宏昭先生に聞く通気・換気のすべて

木造住宅では重要とされつつも、問題も多い躯体の通気・換気。
省エネや耐久性を含めた外皮の設計法を研究している齋藤宏昭・足利工業大学准教授に、6回に渡って躯体の換気・通気についてお聞きします。
(毎月15日号に掲載)

現代の住環境と換気

-近年、リフォーム、特に断熱改修への関心や注目が高まっています。既存住宅の断熱改修を行うにあたって、躯体の通気・換気はどうすればよいでしょうか。

棟換気が1箇所しかない時の通気の1例く

断熱改修で、外壁の充填断熱や気流止め行うと、躯体に浸入した水分が乾燥しにくくなる可能性があります。しかし、外壁通気層があれば乾燥性能を担保できるので、改修時に外壁に手を加えるならば、断熱改修を行った部分だけでも、通気層を設けた方がよいでしょう。住宅全体を改修する場合は、小屋裏や床下の通気・換気にも配慮して計画を立てるべきです。

ただ、実際に断熱改修の対象になるのは、築30年前後の住宅が多いのではないでしょうか。昭和55年省エネルギー基準(旧省エネ基準)に適合する住宅なら、壁には50o前後の断熱材が入っているはず。その場合、壁はそのままにして、床や天井に断熱材を入れ、開口部の性能を高める方法がベターでしょう。

屋根に関しては、リフォーム時に小屋裏を居室にして屋根断熱とすることも多いようですが、VOL.2(2月15日号掲載)で話したように、屋根断熱の際には野地板と断熱層の間に通気の確保が必要です。施工上の注意点としては、通常、屋根通気層は垂木で仕切られているため、それぞれの通気層に給排気口をとらなくてはいけません。全ての通気層にまたがって給排気口を取ることがベストですが、コスト上できない場合でも、垂木頂部を切り欠くなどして、全ての通気層に対し通気経路を確保してください。

-住宅性能が向上しても、住まい手がそれに対応した暮らし方をしなければ、性能が完全に発揮されないこともあります。住まい手の生活習慣や意識についてはどうお考えでしょうか。

VOL.3で瑕疵の事例を取り上げた際(3月15日号掲載)、原因のひとつとして加湿器の可能性を指摘しましたね。2階にリビングがあるような場合、加湿器は小屋裏空間の湿度に大きく影響を及ぼします。

内部結露も省エネも、突き詰めると住まい方に関わる問題になります。一般に、住宅購入者はデザインや間取りに関心が行きがちですが、所有者として長期にわたり建物の性能を維持することにも意識を向けてほしいと思います。昨今は、デザインを優先することによって、躯体を健全な状態を維持するための防水や乾燥性能といった重要な要素が、ないがしろにされることがあります。

住宅を購入する際は、表面上の機能だけではなく、隠れた性能を見抜く目を持ってください。 また、工務店をはじめとする供給者の方々にも、棟換気や通気層の意味をきちんと理解していただきたい。判断基準はあっても、通気層や小屋裏換気がなぜ必要かを、設計者が正しく理解できる情報が乏しいのが現状です。住宅供給者や研究者が、トラブルの原因を整理し、その対策を住まい手に提示できるようなツールを作っていかなくてはなりません。

(取材協力・写真提供: 潟gーコー)



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